松田草介
「ひとり散歩」


 ぼくはぼんやりといつもの散歩道を歩いていた。ぼくにはいつも付き添いがいる。ぼくのあとをつけてくるぼくの影。
 影と一緒にでこぼこ道を歩き続けた。影が起き上がってきた。
 相変わらず君は1人で散歩か。人間のともだちをつくったほうがいいぞ。
 ぼくは少しむっとした。ほっといてくれ。人間のともだちをつくると色々と疲れるんだよ。
 そんなの言い訳だ、自分を苦しめたり悩ませたりする人間から遠ざかってるだけだ、と影が言った。
 返す言葉がみつからず、ぼくは影との会話をやめた。
 太陽が高く上がり、ぼくの影は小さくなった。
 おまえと一緒にいると疲れるよ。そろそろおまえから離れたい。
 影がぼそっと言ってぼくから離れだした。ちょっと待ってくれ、なんできみまでぼくから逃げるんだ。なんでぼくと一緒にいると疲れるっていうんだ。頼むから戻ってきてくれ。
 ぼくの影は遠くへ消え去り、ぼくは本当にひとりになった。

 家に帰り、自分の部屋で眠った。この部屋はつねにカーテンで窓からの光をさえぎり、電気もつけなかった。暗い部屋はすごく落ち着く。ぼくの影は今なにをしてるのだろう。

 ああああああああ。ぼくは大声を出してカーテンを思い切りあけた。太陽の光が差し込む。外の光景が目に入る。暗い室内が照らされた。
 ぼくの影が、そこにいた。
 
 いつのまに戻ってきたんだよ。ぼくは尋ねた。

 影は言った。
 
 この部屋に光がくるのを待ってたのさ。

 


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