たう
「こるり」

 今日は、私のメイドのこるりが作った料理を食べることになった。唐揚げとサラダだ。どちらも大好物だ。だが、訝しい点があったので早めに訊いておくことにした。

「どうぞお召し上がり下さいご主人様」

「その前に二、三訊きたいことがある」

「何でもお尋ねくださいませご主人様」

「君のそのべっとりついているエプロンの染みは色合いからしてどう見ても血糊にしか見えないのだが気のせいだろうか」

「大変失礼いたしました。包丁捌きに慣れていないものですから粗相をしてしまいました。私のことはお気になさらずお食べ下さい」

「君のその頬に出来た擦り傷が気になるんだが」

「これは転んで出来たものでございます」

「うちは昔マリアンヌという名前の猫を飼っていたことがあるんだが、そのマリアンヌはよくうちの柱で爪を研いでいた」

「そうなのですか。大変お可愛い猫様だったでしょうね」

「君のその頬に出来た擦り傷とそっくりだったんだが」

「猫を愛する御主人様は大変素敵でございます」

「いやそうではなくて、問題は君の頬の擦り傷なんだが」

「私は何ともありませんのでお気になさらずに」

「そう言えば厨房でこの世のものとは思えない叫び声がしたんだが」

「私はドジなので本当に申し訳ありません」

「マリアンヌは熱湯を浴びて死んでしまった。今でも覚えている。子供の頃の話なんだが、今思うとその時にマリアンヌがあげた叫び声とそっくりだったんだが」

「空耳ではございませんか」

「しかしこの唐揚げは妙に毛が多いね」

「申し訳ありません。皮を剥ぐのに失敗してしまいました」

「スーパーの鶏肉は皮なんてついていないが」

「御主人様のために活きのいい肉を手に入れようと頑張りました」

「高くついたんじゃないのかい」

「そんなことはありません。お気になさらずに」

 翌日電信柱に近所の住人が猫を探す張り紙が貼られていたので、私はそれをいちいち剥がして回らなければならず本当に大変だった。

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