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たう 「こるり第四話」 |
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今日は私のメイドであるこるり外出権剥奪期間が終了したので、久しぶりにお天道様の下で二人で過ごそうと思いキノコ狩りに行った。身体が重くなってしまった私とは裏腹に、こるりはすいすいと落ち葉を踏み散らしてキノコを採っていく。 「御主人様、マツタケです!」 「マツタケだな」 喜色満面のこるりと私はハイタッチをした。 「今日は御馳走ですね」 「嬉しいのは山々だが、一本しかない。二人で分けるとしようか。後は此間買って来たシメジでシメジ御飯を作ればいい」 「いえ、私のことはお気になさらないで下さいませ御主人様」とこるりは言った。「私はマツタケではなく他のキノコを食べることにします」 こういう場合、無下にこるりの献身を踏み躙るようなことをしては返ってこるりを傷つけてしまうことになる。私は彼女をメイドとして雇った際に、私の父からメイドとは何たるかを十分教えられてきた。献身によって御主人様を喜ばせること、それこそがメイドの至上目的なのだ、と。 「分かった。マツタケは私が食べよう」 「どうぞ存分にお食べ下さいませ」 お手柄を立てたこるりには後で新しいメイド服をプレゼントすることにしよう。そう思い、こるりの料理したマツタケとシメジ御飯を私は食べ、こるりはシメジ御飯とこるりの採ったキノコを食べることになった。 「うむ、美味しい。腕を上げたね」 「お褒めの御言葉ありがとうございます。身に余る光栄です」 「そう言えばお前に渡したハーブ、あれはどうだ。遠慮しないで言ってくれれば別のものを渡そう」 「そんな、ハーブを頂けるだけで十分ですのに。あはっ」 「いや、ハーブ栽培というのも奥が深いね。実に」 「ふふふふふ、本当に感謝しております。さっきも新しいのを焚いて一休みして、存分に香りを満喫してきたところなのです。おほほほほほほ」 「随分嬉しそうじゃないか。気に入ってくれたのかね」 「あはははははははははは、はい」 「今日は実に陽気だね」 「わ、笑いが止まりません、アヒャハハハハハハハハハハハ」 様子がおかしい。もしかして俗に言うワライタケを食べたのではないか。そう思いこるりの食べかけのキノコを見る。ワライタケを食べると人は笑いが止まらなくなるというが、それは実は苦悶に歪んでいる表情がそう見えるだけという話を私は聞いたことがある。私はこるりのキノコを確かめた。 「あ、あ、あの、エヘヘヒヘヘヘヘヘヘヘヘウヘヘエヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ、も、もう駄目でございます御主人様ぁ〜」 違う。ワライタケではない。毒キノコ系のキノコでもない。これはクリタケだ。食べると美味しいのは私も知っている。こるりもそんな初歩的なミスを犯すような愚鈍なメイドではない。 「ヘヘヘヘヘヘヘヘグゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、身体が、宙に浮いていきますぅ〜気持ちいいぃ〜グヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ」 私はある可能性に思い至った。そうか、ハーブだ。 私はこるりの部屋へと赴いた。やっぱり。この匂いはマリファナだ。以前に買った本を参考に片隅でひっそりと栽培していたのだが、他のハーブと間違えて渡してしまったらしい。こるりの笑いは止まる様子はない。 「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ」 マリファナなら問題ない。いずれ気分は収まるだろう。私は一人でマツタケとシメジ御飯を堪能した。 庭を満たすのは、白目を剥いたこるりが唇の端から涎を垂らし体を痙攣させながら吐く止め処もない笑い声。そしてマツタケの独特の匂い。天を仰げば秋の空がゆっくりと夕暮れの紫色に染まろうとしていた。不覚にも、私も少しトリップしたかもしれない。はっはっは。 |
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