松田草介
「人間証明試験」


「本当にきみは人間ですか?」
 
 眼鏡をかけた面接官が履歴書を持ってやってきた男にきいた。

「見てのとおり人間ですよ」

「いや、最近は偽人間が増えちゃってねぇ。うちの会社もかなりの偽人間を社員にしたせいでトラブルが相次いでねぇ」

「それはお気の毒に…」

 面接官は男の持ってきた履歴書に目を通した。

「うん、きみは大卒で、さまざまな資格も持ってるね。できればうちの会社で雇いたいんだが、偽人間かどうかの判断が私にはできないんだ」

 男はポケットからカミソリを取り出して、自分の腕に走らせた。

「ほら、赤い血が出てきました。これでも疑いますか?」

「うーん、それは本当の血かなあ」

 男は体中をカミソリで刻み、血まみれになった。

「これだけ血が流れてても疑いますか?」

「血は本当のようだね。しかし、まだきみが偽人間かどうか判断できないな」

「疑い深いですね」

 男は服を脱いで、左胸に右手を突っ込んだ。

「ほら、正真正銘、人間の心臓です」

 男は自分の心臓を面接官に見せた。

「うーん…どうやらきみは本当の人間のようだね。うちの会社に採用しよう」

「ありがとうございます」

 男は行儀よくお辞儀した。

「ところで、うちがどんな会社かわかってますか?」

「ええ、知ってます。偽人間製造業社ですよね」



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