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ぱらだいす ぱらだ 「同じむささびを見ていた。」 |
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私が机に向ってレポートを書いていると、むささびが、ひらひらと飛んできて、開けておいた窓の隙間から入ってきた。そしてそいつは畳の上にちょこんと座った。そして何も言わず、鼻をヒクヒクさせて、円らな瞳でこちらを見ている。
一目見て、私はそれがなんともモダンなむささびであることに気付かされないわけにはいかなかった。どこが、モダンなのか、あるいは他のむささびと比べてどこがどう違うのか、と聞かれても、口で説明のしようがないのだが、見れば「モダン」としか言いようのない、そんなモダンさを帯びたむささびだった。 「悪いが入るぞ!」 と隣の部屋のもいぞうが、いつものようにドアのノックもせず、入ってきた。もいぞうというのは無論本名ではない。あだ名だ。なぜ「もいぞう」というかというと、やつは一人で居る時、なぜか「もいもい、もいもい」と意味不明な独り言を延々と喋り続けるのだが、「お前、何、『もいもい、もいもい』言ってんだよ」って誰かが指摘しても、「いや、俺は『もいもい、もいもい』なんてぜってぇ言ってねぇ!」と言い張るのだが、しかしそれでもやはり奴の部屋からは『もいもい、もいもい』っていう全くわけのわからない独り言が聞こえてくるので、「やっぱりお前は『もいぞう』だよ」と、誰からともなく、言い出し、それでも「俺は『もいもい、もいもい』なんて、言ってねぇんだがなぁ」と言いつつも別段、「もいぞう」というあだ名を嫌がる気配もなく、そんなわけで、「もいぞう」と呼ばれるようになったというわけだ。 そのもいぞうだが、入ってくるなり、そのむささびに目は釘付けとなった。 「また、なんともモダンなむささびじゃないか!俺にくれよ!」 「俺にくれよ」がもいぞうの口癖なのだが、それは兎も角として、私は奴のその発言に確信を得た。やはり、俺の感じていたこのモダンさは、人類共通のモダンさなのだ! 「だろっ!モダンなんだよ、なんとも」 「本当だよな、このモダンさったら、ねぇよな!初めて見た。俺にくれよ」 「『モダンさ』と『むささび』の渾然一体となったハーモニーっていう感じだな」 「おっ、うまいこと言うねぇ。俺にくれよ」 「今のフレーズか?」 「いや、このむささびだ」 「だめだね」 「なんでだ?」 「俺のものじゃないからだ」 「じゃぁ、俺が貰っても文句はないじゃないか」 「いや、ちがう。このむささびをお前、独り占めしても、本当に良いと思うか?」 「そう改めて、問われれば、何かいけないような・・・」 「だろう」 「なんでだ?」 「俺が思うに、このむささびの『モダンさ』は人類が共通にモダンだと感じる『モダンさ』なんだ」 「人類が共通に?」 「そう。だから、人類共通の宝ってぇわけだ」 「なるほど、世界遺産か」 「そう、その通り!お前、いい所に気がついたじゃないか」 「じゃ、じゃぁ、ユネスコに登録しないと!」 「そ、そうだな。そうとなれば、善は急げだ!」 なんぞと話していると、むささびは、ぴょんぴょん跳ねて、窓の近くまでいくと、隙間から、ひょいひょいっと、窓枠、手すりへと飛び移り、さらに弾みをつけて、そのまま上昇気流に乗って天高く舞い上がった。 「うわぁ、飛んでったぁ。しかも、飛び方までもがモダンだぁ」 「『俺は何にも束縛されないぞ』っていうような気高ささえ感じられるモダンさだなぁ」 我々はそのむささびの飛び姿をうっとりと見送った。もいぞうも、私が隣に居ることさえ忘れて見入っているらしく、「もいもい、もいもい」言っている。 「ところで、お前、何で『もいもい、もいもい』言うんだ?」 「だから、俺は『もいもい、もいもい』なんて言ってねぇって」 「・・・・・・・・・・・・・・」 むささびは伸びやかに上昇を続け、どんどん小さくなっていく。 「・・・もいもい、もいもい、もいも・・・」 やがてむささびは、完全に見えなくなった。夕日が西の空を真っ赤に染めながらゆっくりと沈んでいく。 突然、もいぞうは「もいもい」言うのをやめて、ふと我に返って言った。 「ところで、むささびとももんがぁってどこがどう違うんだ?」 「 」 「 」 |
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