cooky@ローラン
「【楽園】へ。」

ウォッチャーは深い溜息をついた。

「何故だ… 兄妹達には、ここが楽園では無かったとでも言うのか?!」


モニターには空の部屋がいつまでも映し出されている。
兄妹達に与えた部屋だった。

「救いたかったのだ… そう、この箱舟こそ楽園だ」

悲観になりながらも、楽園を求めていた妹が。
ウォッチャーの頭から離れない。


=どうしてだ… あの子達に帰る場所は無い…=


雑踏を走りながら、ソロルは嬉しそうだった。
【お兄様と一緒に居られる所が、私の楽園…でも…】

妹がしっかり手を握ると、フラーテルは速さを増して駆ける。

ソロルがいつも持っていた造花は、脱走の一件でボロボロになっていた。


「本当にこっちであってのか、ソロル? 
僕達は、帰り道を間違えたら大変な事になるんだぞ…?」

妹が道の案内が出来ると言うので、今回の脱走を試みた。
こんなスラム街、いつの間に来ていたと言うのだろうか。

雑踏を抜けたが、今度は袋小路が兄妹の前に立ち塞がる。


「? ソロル、ホントにあっているのかい?」

「【還れるの】… 私と、お兄様… やっと【還れるの】…」

「うん、そうだよ… 帰ったら、父さんとの約束g……」


とすっ。


造花がフラーテルの腹部に当たる。

「え………そ…ソロ…ル……?」

「馬鹿ねぇ、お兄様…私達、帰る場所なんてもぅ無いわ!
あの舟の奴等が村を焼いてしまったもの!
全て! 灰に!! うふふふふふふっ」

壊れた人形の様にクスクスと笑い出す妹。
手には、恐ろしい程の紅。 
最愛の人の暖かい紅が造花に飛ぶ。

「ソ…ロ……」 口から零れる、最愛の人の名。
あんなにも…愛し合っていたのに………

父との約束は、護れる事無く。 冷たい地へ事切れていく。

ぴちゃり、と、妹が傍らに座わり、
フラーテルをその手で抱く。



「嗚呼…私達だけの楽園へ【還りましょう】お兄様…」




乾いた銃声が、袋小路に響く。


黒い闇が、浅く笑ったように見えた。

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