ねぎとろわさび
「Real Love」

オシドリ夫婦ってよく言うだろ?
だけど、一夫一婦制の多い鳥類でも不倫は当たり前なんだ。
ある研究によれば、半分以上のつがいで親が夫でない子供が生まれているんだぜ。
そう考えると、オシドリの夫は悲惨だよな。
まあ、それが自然の摂理なんだから仕方がない。
以前、悪友が酒の席で力説していた。

男女の愛はエゴだ。
俺は、いつからかそう思っている。
人々は己の寂しさと欲望を満たすためにパートナーを探す。
所詮、恋愛の裏の顔は「裏切り」「虚構」「弱肉強食」。
本当の愛なんてどこにも存在しない。

ヒロコと再開したのは、桜の花びらが舞う休日の公園。
学生時代、俺たちはつきあっていた。
「あなたは子供過ぎるのよ。」
やきもち焼の俺に愛想をつかしたヒロコが俺に言った最後の言葉だ。

「久しぶり・・・」
気後れを心の奥に押し込んで、俺はヒロコに声をかける。
「あら!久しぶりね。」
あの頃と変わらぬヒロコの自信に満ちた笑顔。

だけど・・俺は風の噂に聞いていた。
ヒロコは離婚して、今はアパートで子供と二人暮しだと。
俺は密かにヒロコのことを心配していた。
ちょっと事情を聴いてみようと思いたち、ヒロコを喫茶店に誘う。

桜の舞い落ちるアスファルト。
ヒロコは桜を見上げながら、俺をリードするように少し前を歩く。
付き合っていた頃は、いつも俺の腕を引っ張るように歩いていたヒロコ。
昔のままだな・・俺は心の中で苦笑する。
でもそういうところに惚れたんだっけかな・・・

「知ってるでしょ?私離婚したの。」
俺たちは、公園脇の喫茶店の一番景色の良い席に陣取った。
「ああ、聞いたよ。大丈夫?」
元気そうだけど、一応聴いてみる。

「ありがとう。今付き合っている人がいるのよ。」
ヒロコははにかんで答えた。
「そっか・・・幸せなんだね?」
「どうかしらね。私は彼のこと好きだけど・・・」
ヒロコの悲しそうな笑顔。
昔だったら絶対に見せなかった表情だ。

「何さえない顔してるんだよ?
 ヒロコみたいないい女だったら、絶対に幸せになれるよ。」
俺は言葉を尽くしてヒロコを励ます。
彼女に悲しい顔をさせたくない。
心からそう思った。

「そろそろ、息子を迎えに行かないと・・・」
しばらく談笑をした後、俺たちは喫茶店を後にする。
「幸せになれよ!」
別れ際、俺はヒロコの背中に声をかけた。

桜の舞い落ちるアスファルト。
ヒロコは立ち止まり、そして振り返った。
「やっぱりあなたは子供ね。」
彼女は苦笑していた。
「でも、あなたのそういうところが好きだったのよ。」

やっぱり俺は子供なのかな?
彼女と別れた後、公園のベンチに座って考えた。
目の前の池をオシドリの夫婦が幸せそうに泳いでいる。
いつかの悪友の言葉を思い出す。

ま、いっか。
俺は、ただただヒロコに幸せになって欲しい。それだけだ。
きっと、こういう気持ちが本当の愛ってもんなんだよ。
俺は自分に言い訳をするように呟いた。
すると、俺の意見に同意をするかのように
オシドリのオスがクェックェッと鳴いた。

<戻る(携帯不可)
<総合索引
mixiへ(携帯不可)>