奈央
「梅雨の明ける電話。」

彼女の憎まない主張の弱い青い空。
まだ全然本調子じゃない、はじまりの空。
いずれ白と青のコントラストが強くなっていくにつれて
彼女は空を熱くなった躰と共に憎む。
その隙間の日。
彼は言う。
『キミのそういういやらしいところって嫌いだ』
『わたしはあなたのそういう繊細なところが好きよ』

彼は不満そうに、また本に目を戻す。
彼女は両手をあげて、伸びをしたり、片足をあげてみたり
丸まってみたり、背中まである真っ直ぐな髪をかきあげてみたり
小さい声でマザーグースを呟いたりしていた。
『ねぇ、たまたま合うところで愛し合ったりしているのはさみしいことよね』
『だって、そういう世界だもの、仕方ないさ』
『でも全部だったら気持ち悪い』
彼は微笑した。
『そしたら何処までも逃げるしかない』
彼女も彼も『さみしい世界』を意外と気に入ってる。
陽光がやわらかく部屋に入り込む。

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