cooky@ローラン
「しあわせのふね」

大きな船が、空を泳いでいるよ。





「ママ、あれはなぁに?」

ママを、船が見えるところまで連れていく娘。


天を仰いで、ママは言った。
「あれは【しあわせのふね】よ」

「【しあわせのふね】? なぁにそれ。」

とろとろと、のろのろと。
空を飛ぶ船。


「【しあわせのふね】はね、見つけても乗ってはいけないの」




ママは、娘と同じ視線になるようにしゃがむ。

「あら、なんで? しあわせになれるのでしょう? 
だったら、私、すぐに乗りたいわ。」

娘は、自分の見窄らしい格好を見ながらママの肩を掴む。

ママは静かに首を振った。


「あの船はね、乗っていい人と、だめな人がいるの。 
そして、乗った人がしあわせになる事は…

ないのよ。」


キョトンとする娘に、続けてママは話す。


「乗っていいのは、
例えば、人の物を盗ったり
例えば、殺してしまったり
例えば、人を騙してしまったり
居場所の無くなった人が乗れる船なの。

わるい人が乗っていく船なのよ?」


娘は、空を見上げる。


のんびり、とろとろ、のろのろ。



「中の人たちは、わるものなの?」


娘が、視線を戻して尋ねる。


「そうよ。 船のなかでは、足を繋がれて、自由に動けないの。
逃げられないし、そぅ、とてもこわいのよ?」


娘を引き寄せて、抱き締める。
ママの手に力がこもった。


=ふぅん… でも、【しあわせのふね】なんて。 
へんな感じっ!=


=ふふっ、そうね。 
さぁ行きましょう。=


ママが娘を促す。


とことこ、
娘がママの右側に回った。









「そういえば、何でママは左足が無いの?」

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