nolly
「スパークリングセール」

小学校の校庭。
二人がブランコに乗っている。



おとうと:「にぃちゃん。」


  あに:「何?」


おとうと:「あのさぁ、レジってなんか怖くない?」


  あに:「怖い」


おとうと:「やっぱり。この間、レジでお金払ったらさ、

      『1000円からお預かりします』って言うんだよ」


  あに:「お前、そのあと何も聞かなかったよな?」


おとうと:「聞いてないよ。何か嫌な感じがしたからさぁ」


  あに:「危なかったな。

      その時にな、
     
      『1000円からどこまで預かるんですか?』
     
      なんて、絶対に聞くんじゃないぞ」


おとうと:「なんで?」


  あに:「お前、『とめどなく』って言われたら、

      ずっと払い続けなきゃいけないんだぞ」


おとうと:「にぃちゃん、そんなの嫌だよー」


  あに:「だからレジの人に気軽に質問しちゃいけないぞ。

      気をつけろよ。あれはな、誘ってるんだからな」


おとうと:「うん。気をつけるよ。にぃちゃんは頼りになるなぁ。
      
      それでね・・・」


  あに:「ん?」


おとうと:「もう一つ、聞きたいことがあるの」


  あに:「何?」


おとうと:「『スパークリングセール』って、どんなセールなの? 

      行った事ある?」


  あに:「行った事ないけど。どうして?」


おとうと:「今、宣伝してるじゃん。『セール開催中です』って」


  あに:「あぁ、そうか。にぃちゃんも聞いたことはあるんだけど、

      行った事ないなぁ・・・」


おとうと:「なーんだ。行ったことないのか。もし行ったこと

      あったら、どんな所か知りたかったんだけどなぁ」


  あに:「ばかだなぁ。行ったことなくたって、想像ぐらいできるよ」


おとうと:「なに?なに?どんなトコ?」


  あに:「だから。・・・なんだ、『スパークリングセール』だろ?」


おとうと:「うん」


  あに:「正確にはわかんないけどさ。似たものから考えていけば、

      きっと答えは出るよ。近い言葉とかモノとかから探せばさ」


おとうと:「それで?」


  あに:「だから、・・・あれだよ。

      『スパークリングウォーター』って聞いたことあるだろ?」


おとうと:「あるよ。この間、飲んだもん」


  あに:「どうだった?」


おとうと:「炭酸だった」


  あに:「だろ?だから・・・」


おとうと:「・・・うん」


  あに:「『スパークリングセール』も炭酸なんだ。」


おとうと:「『シュワ〜』っとしてるの?」


  あに:「『シュワ〜』っとしてるさ」


おとうと:「すっげぇ〜。爽やかじゃん」


  あに:「そうだよ。きっと行ったら爽やかな気持ちになれるんだよ。

      このうっとうしい時期に『シュワ〜』っとするお店に行って。

      爽やかな気分で買い物してもらって、気持ちをリフレッシュ

      してもらおうっていうことだよ。」


おとうと:「行ったら気持ちよくなれるの?」


  あに:「そりゃ、なれるさ。お店入った途端に『シュワ〜』だぞ」


おとうと:「気持ちよさそう」


  あに:「そうだよ。

      財布開けても、『シュワ〜』。

      お釣りもらっても『シュワ〜』。

      店員のあいさつだって『いらっしゅわいませ〜』だぞ」


おとうと:「にぃちゃん。行きたいよ。今すぐ行こうよ〜」


  あに:「『行こう』って。・・・もう夜の6:30だぞ。明日、休み

      なんだから明日にしようよ」


おとうと:「やだよぉ。今すぐ行きたいよ。今がいい」


  あに:「・・・わかったよ。じゃあ、急いで行こう」


おとうと:「うん」




一時間後・・・。


帰り道。


とぼとぼと二人が歩いている。




おとうと:「・・・・・・」


  あに:「・・・・・・」


おとうと:「・・・にぃちゃん。」


  あに:「・・・なに?」


おとうと:「全然・・・『シュワ〜』っとしてなかったね。」


  あに:「・・・うん」


おとうと:「『シュワ〜』ってしてるって言ったじゃん!

      なんで、『シュワ〜』ってしてなかったの?」


  あに:「・・・ずっと考えてたんだけどさ。きっと行く時間が良くな

      かったんだよ」

おとうと:「どうして!?」


  あに:「開けたままの炭酸って、時間が経つとどうなってる?」


おとうと:「あまり『シュワ〜』っとしてない・・・」


  あに:「だろ?お店もきっとそうなんだよ」


おとうと:「遅い時間に行くとダメなの?」


  あに:「うん。きっとお店も炭酸がだんだん無くなっちゃうんだよ」


おとうと:「お店の人・・・疲れた顔してたもんね」


  あに:「お店の人も疲れて、気が抜けちゃったんだよ。

      だから『シュワ〜』って感じなかったんだよ。

      ・・・ってことは。

      逆に早く行けば良いと思うんだ」


おとうと:「あっ、そうか!!」


  あに:「フタを開けてすぐの炭酸ってどうなってる?」


おとうと:「すごく『シュワ〜』っとしてる」


  あに:「だろぉ?つまり・・・」


おとうと:「早いうちに行けば『シュワ〜』ってしてるってことじゃん」


  あに:「そうだぞ〜。だから明日、開店時間に合わせて行くんだ。

      きっとお店も『シュワ〜』っとしてるよ」


おとうと:「にぃちゃん。やっぱりあたま良いね〜」


  あに:「良いだろ〜。そうと分かれば、早く帰って寝るぞ」


おとうと:「うん」


そうしてダッシュで帰る二人でした・・・。

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