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あーみ 「時計」 |
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目覚めては眠りしていた何度目かの時、びっしょりと汗まみれになっている自分に気付いてまた、目が覚めた。全身が、突然、水を被ったみたいに濡れている。着ていたネルのパジャマを床に脱ぎ捨て、裸になって、ベッドからストンと降りた。裸足の両足にしんと冷たさが伝わってくる。スタスタとキッチンへ歩くと、吊るしてある紺地の大判のバスタオルをすっぽり被るように身体に掛けた。背中を伝って汗がするすると落ちている。
「あこ、そこで何してんのよ」 「・・・・・」 身体をすっかり拭いてから、ベッドルームに戻り、無機質なクローゼットの引き出しを開ける。中から黒の無地キャミソールと、少し迷って、くるぶしまである丈の長い部屋着のパンツを取り出し履いた。 「足は冷えるかもしれないし」 ベッドに再び潜り込んだ。 あこは黙って藤製のオープン式の小物入れから、小瓶を取り上げているところだった。4つの仕切りの一列にはルージュ、真ん中の列にはマニキュアがずらりと並べてある。 「指先に灯が点る」と、あつは言った。何か買ってやるよと言うと、「マニキュアを」と答えて連れて行かれた店で選んだ「NY」とという名のキラキラ光る爪色のマニキュアは、『はけ』が、底に溜まった液体に届かないところ迄減っている。あこは小瓶を振ってみた。液はねっとりと固まりかけていて、それがもはや実用性のないものであることが見て取れる。それから、小さい方の爪切りを選んで、足の爪を丁寧に切った。 その部屋。そこかしこに時計があるのだ。大・小・色・形の様々な時計。一つだけ、それらの共通点は、文字盤がはっきりと数字で書き表わしてあること。どの時計の文字盤も、1〜12の数字が全部書き込まれている。 「見た瞬間、何時何分かすぐにわからなければイヤよ」 と言っては幾つも買い集めたあつの時計たちは、あこが顔を上げ、見ると、一斉に4:46を指した。 インターホンの音。 応答。 「佐々田亜津深さんですね」「・・・・」 玄関の重い扉が開く。 「佐々田亜津深さんですね。2年前に亡くなった、金田明彦さんの殺人 容疑で逮捕状が出ています」 「・・・・」 「あなたには黙秘権が・・」「刑事さん」 「?・・」 「今、何時ですか」 「・・4時46分だが。」 「・・・・」 「・・あなたには黙秘権がある ―」 金田明彦 2001年 9月2日 死亡 死因 溺死 死亡推定時刻 夕刻16:30 当時抗鬱剤を服用 幻覚があったため、殺人・事件の両面から捜査を続ける すすきの伸びた川べりで川に頭を突っ込む形で突っ伏して倒れているところを発見 所持品2点 上着のポケットに抗鬱剤カプセル8錠とatsumiと彫られた文字盤の割れて止まった腕時計 |
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