奈央
「梅雨の明ける電話。」

僕等はとてもよく眠る。
僕等というのは、僕と彼女のことだ。
僕等は手を繋いだ瞬間に、ブラックホールみたいな深淵を転がり、数分もかかることなく眠りへ包まれる。
イラついたトゲみたいな彼女も。<彼女、ちょっとオカシイんだ>
ポーが描くような暗澹たる扉が開いている僕も。<彼、ちょっとオカシイのよ>
ベッドの上でバラバラになって、グチャグチャな毛布のかけかたをして
眠り
眠り続けて
眠り
夢なんかみないで
とにかくよく眠りたいんだ。眠りたいんだわ。
半分この世界に引き摺られて、半分起きる。
まだこっちの世界に繋がれてるんだったら、ミルクティーでも作って、その香りで彼女も目が覚めるかもしれない。<覚めないかもしれない>
まだお互い、この世界に通じているなら。
電話が、切れてるコードなのにジリリン!と鳴り響く!
ビックリして受話器をとるんだ。
僕等がやるべきことを言ってくれる。<着替えて外に出なさい。もう雨は降らない>

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