ぽいた
「戦争とマグロ」

弾丸は尽きた。
食料もない。
仲間もほとんど死んだ。

支店長にある日呼ばれた。
「吉村君、すまんが君、行ってくれるかね?」
「行ってくれって・・・まさか・・・」
「君もわが社の状況がわかっているだろう。いまのうちに
渇涛。水産を潰しておかなければ非情にまずいことになる」

たしかに渇涛。水産は社長が代替わりし飛躍的に成長を遂げている水産加工会社だ。
しかし、私の勤務する丸水も全国的に名の知られた会社である。
有力商品の「七色かまぼこ」はかまぼこのシェアNO1を誇るヒット商品である。

「本来なら経理担当の君が前線に呼ばれるという事はあってはならないことなのだが、営業部1課2課はすでに甚大な被害を受けている。
もはや、経理課・総務課職員も全員一丸となってことに当たらねば
わが社の将来はないのだよ」
支店長が沈痛な面持ちで話した。
「私にも異動の話がでているんだ。私の力が及ぶうちは君のような優秀な社員は少しでも安全な前線に異動させたいんだ。」
「支店長はどちらに・・・・」
「私か・・・私は気仙沼だ・・・」
支店長は搾り出すような声で自分の行き先を告げた。
「支店長!気仙沼って・・・もはや制空権も握られ陥落寸前の支店ではないですか。お子さんもまだ小さいのに・・・」
「わたしの話はいいんだ。君には下関にいってもらいたい。西日本の漁港はまだ我々の勢力下に置かれている。渇涛。水産も下関には攻撃はしてこないだろう・・・行ってくれるな・・・」

かくして私は下関に異動となった。
しかし、支店長の話よりもことは深刻であった。
渇涛。水産は裏ルートでロシアを味方につけ、一気にわが社を潰そうと攻撃を緩めなかったのだ。
函館・根室・新潟・・・・支店がどんどん壊滅していった。
そして今日、気仙沼も陥落した。
支店長は最後まで戦い抜きサクラのように散った。

下関にも攻撃が始まった。
渇涛。水産の200キロ型冷凍マグロのじゅうたん爆撃に
もはや太刀打ちできるはずもなかった。

しかし、このままでは死んでいった者たちに顔向けができない。
私は七色かまぼこを握り締め最後の抵抗をはじめたのであった。

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