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ティガー 「夕方の再会」 |
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夕方だというのに、私が仕事を中途半端にしてすっかり眠りこけていると
シンドウがやってきた。 おもての駐車場に白のテルスターのステーションワゴンが停まった。 薄暗がりの中でも分かるくらい、 水あかなんか付いてないぴかぴかの白で 低くした車体からのぞくホイールもぴかぴかだった。 私と会っていたときは、電気設備の道具をいっぱいに積んだ クリーム色か汚れか分からないバンに、シンドウは乗っていた。 そして、待ち合わせるのは、 いつも人目の付かない夜の神社の駐車場だった。 なぜ今日にかぎって、わざわざ家まで来たのだろう。 私は、シンドウに見付かりたくなかった。 もう、シンドウとは7年前に終わっているのだ。 シンドウは、私が小学3年生のときに好きになった、 いわゆる「初恋のひと」だった。 私がめそめそ泣いていると「このおにぎり、おっぱいみてぇだな」 とシンドウがつぶやいたのがおかしくて、 泣き止んだことがあった。それから私はシンドウを好きになった。 中学1年生のときについにラブレターを郵送するという手段で告白をした。 返信用の封筒に切手を貼って同封した。 返事は、「人間なめんな。100万年早い!!」 とシンドウの友人が書いたもので、下駄箱に入っていた。 それから10年後、地元に帰った私の自宅にシンドウから電話があった。 呑みの誘いだった。 二つ返事で私はシンドウと会った。 酔ってホテルへ行った。私は、シンドウといられるのが嬉しかった。 シンドウは体も拭かずにベッドへダイブした。 そういう奔放さが好きだった。 何度か会ううちに、私の友人から、 シンドウは小学校の同級生と結婚していると聞いた。 シンドウの妻であるカナちゃんとは、 たまにコンビニで会ったりして気まずかった。 ある日私はシンドウに告げた。 「ねぇ、シンドウ。もう、終わりにしよ。 シンドウも何かとやばいでしょ。」 「わかった。」 それきり、シンドウと会うことはなかった。 私の車が駐車場にあるので、 シンドウは私が家にいるものと思っているのだろう。 ドアが閉まる音に続いて、庭に敷かれた砂利を踏む音が聞こえて来る。 私は音を立てないように床を這って移動した。 部屋の東側の出窓の下に地袋という、 人ひとりがやっと入れる大きさの収納があった。 私はそこに足から入り、中に隠れようと思った。 カーテンを閉めるのを忘れていた。 南側の窓越しにシンドウが覗いているのが分かる。 今度は出窓にまわったようだ。 私の体は、地袋にゆっくり慎重に入りつつあるが、頭が入らない。 玄関の鍵を締めるのも忘れていた。 からからからと玄関の引き戸が開けられる音がした。 私は目を閉じた。 シンドウは奥の部屋から探索し始めた。 足音が近付いてきて、とうとうシンドウは私がいる部屋へ入って来た。 私は地袋から頭だけ出したかっこうで寝ている。 「何してんだ。おまえ。」 とうとう見付かってしまった。 私は眠っている振りをした。 シンドウは私の頬を冷たい両手ではさむと 額に唇を静かに付けて、それから帰って行った。 私は、ほっとしてまた深い眠りに就いた。 |
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